
注意点・落とし穴・よくある失敗・弁護士に依頼するメリットまで分かりやすく整理
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【30秒で分かる自己診断】 |
はじめに
マンションやビルの「共有部分」の管理は、現場では揉めやすい分野です。外壁、廊下、階段、エレベーター、屋上、受水槽、共用配管など、誰か一人のものではない部分だからこそ、「誰が決めるのか」「誰が費用を負担するのか」「どこまで立ち入れるのか」が曖昧になりやすいのです。
特に不動産業者の立場では、管理会社として理事会対応をしている場合、売買仲介や開発の過程で管理状況を確認する場合、あるいは空き地・空き家の再生案件で共有状態の建物に関与する場合など、共有部分の管理問題に触れる場面が少なくありません。
ここでいう「共有部分」とは、区分所有建物において、専有部分ではない建物部分をいいます。平たくいえば、各所有者の部屋の外側にある、みんなで使う部分です。また「管理組合」とは、区分所有者全員で構成される団体で、建物や敷地の管理を担う主体です。区分所有法でも、区分所有者は全員で建物等の管理を行うための団体を構成するとされています。
この記事では、共有部分の管理で起こりやすいトラブル、他の管理者や所有者との調整方法、よくある失敗と回避策、そして弁護士に依頼するメリットを、初心者にも分かりやすく整理します。
まず押さえたい基本整理
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用語 |
意味 |
実務での注意点 |
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共有部分 |
区分所有者全員または一部で共有する部分 |
外壁・廊下・階段・屋上・共用配管など。境界の理解が曖昧だと修繕費や責任で揉めます。 |
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専有部分 |
各所有者が単独で所有する部分 |
室内の内装や設備でも、共用部分と構造上一体の箇所は扱いが複雑です。 |
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専用使用部分 |
共用部分でありながら、特定の区分所有者により排他的に使用できる部分 |
専用する所有者による勝手な変更はできません。 |
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保存行為 |
現状維持や劣化防止のための行為 |
漏水の応急補修など、緊急対応で問題になります。令和7年改正の流れでも重要論点です。 |
共有部分の管理でよくあるトラブル
1 共有部分と専有部分の境界があいまい
典型例は、バルコニー、玄関ドア、窓サッシ、配管です。見た目は個人の部屋に付属していても、法律上・規約上は共有部分や専用使用部分として扱われることがあります。ここを感覚で処理すると、「所有者負担だと思っていた」「管理組合が直すべきだと思っていた」という衝突が起こります。
2 漏水・設備故障で責任の所在が争いになる
上階からの漏水で天井に染みができた場合、原因が専有部分内の設備なのか、共用配管なのかで負担者が変わり得ます。国土交通省の令和7年標準管理規約改正資料でも、専有部分内の配管漏水が共用部分へ影響するケースが想定例として示されています。放置すると被害が拡大し、損害賠償や営業補償の話にまで広がります。過去には専用使用部分(共有部分)からの漏水で、管理組合からの要望で区分所有者が修繕費を負担したものの本来的には管理組合が負担すべきものだったとしてトラブルになったことがありました。
3 修繕の要否・範囲・時期で合意ができない
「まだ使えるから工事は先でよい」という所有者と、「資産価値の維持のため早めにやるべき」という所有者が対立するのは珍しくありません。修繕は感情論になりやすく、長期修繕計画が弱い管理組合ほど揉めやすい傾向があります。
4 立入りや工事への協力を拒まれる
共用部分の管理のために、専有部分への立入りや補修が必要になることがあります。例えば、漏水の原因調査で室内に入る必要があるのに、所有者が協力しないケースです。最近の標準管理規約改正では、必要な範囲で保存行為の実施請求まで明確化されています。
5 費用負担の説明不足で不信感が生じる
管理費、修繕積立金、臨時徴収のどれで賄うのかが曖昧だと、理事会や管理会社への不信につながります。管理費用の範囲や経理の透明性は、国土交通省の指針や基本方針でも重視されています。
よくある失敗・勘違いと、その回避策
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やってはいけない |
こうすれば進む |
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管理規約を確認せず、現場の慣行だけで判断する |
区分所有法、管理規約、使用細則、過去議事録まで確認し、「法的ルール」と「その建物固有のルール」を分けて整理する |
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原因調査を後回しにして、責任論から入る |
写真、点検報告書、修繕履歴、業者意見を先に集め、事実関係を固めてから交渉する |
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感情的な当事者同士に任せて長期化させる |
管理会社・理事会・所有者の役割を切り分け、必要な段階で弁護士が文書で交通整理する |
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費用負担の説明を口頭だけで済ませる |
見積書、議案、負担根拠、支払スケジュールを文書化し、後で見返せる状態にする |
共有部分の管理における他の管理者や所有者との調整方法について
共有部分のトラブルをうまく収めるには、いきなり法的対立に持ち込むのではなく、まず現場と事実を確認する、「根拠資料をそろえて、論点を分解する」ことが大切です。実務では次の順番が有効です。
・問題箇所が共有部分か専有部分か、専用使用部分かを切り分ける
・現地写真、点検結果、修繕履歴、見積書を集める
・誰に、どの法的根拠で、何を求めるのかを整理する
・任意の協議で進まなければ、内容証明郵便や法的手続を検討する
ここで重要なのが、「保存行為」という考え方です。保存行為とは、建物を今ある状態で維持し、悪化を防ぐための行為をいいます。例えば、漏水の応急補修や危険箇所の一時的な対応がこれにあたります。大規模な改良工事とは違い、緊急対応の必要性が高い場面で問題になります。
また、所有者の中に協力的でない方がいる場合でも、管理組合が主体となって進めるべき事項と、個別所有者が対応すべき事項を混同しないことが重要です。管理組合は、共有部分の範囲や管理費用を明確にし、違反行為には是正措置をとることが求められています。
不動産業者としては、売買・管理・開発の各局面で、「この物件の管理が機能しているか」「将来紛争化しやすい論点はどこか」を先に見抜けるかどうかが差になります。空き地・空き家の再生案件でも、区分所有建物が絡むなら共有部分のルール確認は欠かせません。
必要書類・手順(読者の不安を下げるための実務チェック)
・総会議事録・理事会議事録
・現場写真、動画、点検報告書、漏水調査報告書
・見積書、請求書、修繕履歴、保険関係資料
・所有者・入居者・管理会社とのやり取りの記録
・問題発生日時、被害内容、応急対応の経過メモ
これらがそろうだけで、交渉の精度はかなり上がります。逆に、資料がないまま主張だけ先行すると、管理会社・所有者・施工業者の誰も動きにくくなります。
相談すべき境界線
次のような段階に入ったら、社内だけで抱え込まず、弁護士に相談するのが安全です。
・立入り拒否、工事拒否、費用負担拒否が出ている
・漏水や剥落などで被害が拡大している
・管理規約の解釈が割れている
・内容証明郵便、訴訟、仮処分、差止請求を視野に入れる必要がある
この「境界線」を超えた案件は、早めに法的整理を入れた方が、結果的に時間も費用も抑えられることが多いです。
不動産管理トラブルを弁護士に相談するメリット
弁護士が入るメリットは、単に裁判をすることではありません。むしろ実務では、争点整理、証拠整理、交渉窓口の一本化、文書作成による圧力の適正化に価値があります。
特に不動産業者にとっては、「現在の顧問弁護士はいるが、不動産管理の細かな現場感が伝わりにくい」という悩みがよくあります。共有部分の問題は、区分所有法、管理規約、実務運用、修繕・保険・管理会社対応が絡むため、一般論だけでは解決しにくいからです。
弁護士が関与すれば、誰に何を求めるべきかを明確にし、必要に応じて内容証明郵便、交渉、訴訟対応まで一気通貫で進められます。トラブルの初期段階から入るほど、深刻化を防ぎやすくなります。
当事務所が選ばれる理由
蒼生法律事務所は、不動産分野の実務に根ざした助言を重視しています。単に条文を示すだけでなく、管理会社・所有者・理事会・施工業者が実際にどう動くかを踏まえて、現場で進む解決策を提案します。
また、顧問弁護士を探している不動産業者の方だけでなく、「今の顧問弁護士はいるが、レスポンスや実務理解に物足りなさがある」という方からのご相談にも対応しています。共有部分管理、修繕トラブル、立退き、賃貸管理、空き地・空き家の活用など、不動産業の現場でつながる問題をまとめて見られるのが当事務所の強みです。
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参考資料・出典
・建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
・マンションの管理の適正化の推進に関する法律(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC1000000149
・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/mankan12.pdf
・マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001909548.pdf
・マンション標準管理規約(単棟型)(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001965185.pdf
・令和7年マンション標準管理規約改正(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001968331.pdf
・マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf
※本記事は一般的な法的情報の提供を目的とするもので、個別案件の結論は事案により異なります。
- 代表パートナー・所長
- 高橋 英伸
- 京都大学法学部卒業後、旧司法試験合格を経て2006年に弁護士登録。大阪市内の企業法務系事務所で15年のキャリアを積み、2021年に蒼生法律事務所を開設。相続・共有・所有者不明土地など空き地・空き家問題に注力。宅地建物取引士・相続アドバイザーの資格も保有し、不動産に関わる法的問題を総合的にサポートしています。
