弁護士が解説!実は雨漏りがしていたなどの売買契約の履行トラブルの対応方法と弁護士に相談するメリット

「引き渡しの直後に、屋根から水がポタポタ…」。不動産仲介業に携わっていれば、一度は耳にしたことのある話ではないでしょうか。契約書には何も書いていない、しかし買主さんは怒っている、売主さんは「そんなの知らない」と主張する——。売買契約の履行トラブル、いわゆる契約不適合責任をめぐる紛争は、不動産業のなかでも対応が難しい領域のひとつです。

こんにちは。蒼生法律事務所の代表弁護士、髙橋英伸です。これまで多くの不動産会社様からご相談を受けてきた経験から、「もっと早く相談してくれていれば…」と感じる場面が少なくありません。この記事では、不動産仲介業の実務で頻発する売買契約の履行トラブルについて、初期対応のコツ、弁護士への相談メリット、そして予防策までを、できるだけ噛み砕いてお伝えします。

【まず30秒で自己診断】あなたの案件、危険度チェック

次のうち、ひとつでも当てはまるものがあれば、早めの専門家相談をおすすめします。

買主から「話が違う」「聞いていない」といった連絡が入っている

雨漏り・シロアリ・給排水管の不具合など、物理的な瑕疵(かし/欠陥のこと)が発覚している

告知書や重要事項説明書に記載がない事実が、引渡し後に判明した

買主から修補費用・損害賠償・契約解除などを求める書面が届いている

売主と買主の言い分が食い違っており、当事者間の話し合いで膠着(こうちゃく)している

「いつまでに」「どこまで」対応すればよいか、社内でも判断がつかない

 

2つ以上チェックが付いた方は、事態が複雑化する前に弁護士へご相談ください。初動を誤ると、解決までの期間と費用が数倍に膨らむことがあります。

不動産仲介業でよくある売買契約の履行トラブル例

不動産売買における履行トラブルは、2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと枠組みが変わりました。ここで重要なのは、「契約の内容と違うものが引き渡された」場合に売主が責任を負うという点です。では、具体的にどんなケースが問題になるのでしょうか。

物理的な問題

いわゆる「建物や土地そのものの欠陥」です。目に見える欠陥は契約前に気づきやすいですが、厄介なのは隠れた不具合。以下のような事例が典型です。

トラブルの種類

具体例

主なリスク

雨漏り

屋根・外壁・サッシ周りからの浸水

修補費用の請求、内装被害への損害賠償

シロアリ被害

床下・柱の食害、構造部分の損傷

駆除費用・補強工事費用、契約解除

給排水管の不具合

漏水、詰まり、破損

改修費用、階下住戸への賠償

土壌汚染・地中埋設物

有害物質、コンクリートガラ、古井戸

除去費用(高額になりがち)、工事遅延

境界未確定

隣地との境界杭の不存在、越境

隣地所有者とのトラブル、利用制限

 

【あるあるエピソード】築20年の戸建てを仲介したケース。引渡後に雨漏りが発覚し、買主から約150万円の修補費用を請求されました。売主は「住んでいたときは問題なかった」と主張しましたが、調査の結果、屋根材の経年劣化が原因と判明。告知書に記載がなかったため、仲介業者さんまで「説明義務違反ではないか」と追及される事態に発展しました。

環境的・心理的問題

物件そのものに物理的な欠陥はなくても、周辺環境や過去の出来事によってトラブルになるケースもあります。こちらは「心理的瑕疵」「環境瑕疵」などと呼ばれ、近年は裁判例の蓄積により判断基準が少しずつ明確になってきました。

  • 心理的瑕疵:過去に自殺・他殺・孤独死などが発生した物件(いわゆる事故物件)
  • 環境瑕疵:近隣の騒音・振動・悪臭、反社会的勢力事務所の存在、近隣トラブルの常態化
  • 法令上の制限:建築基準法上の再建築不可、接道義務違反、市街化調整区域の制限
  • インフラ問題:道路が私道で通行・掘削承諾が得られない、下水道未整備で浄化槽必須

 

国土交通省は2021年に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定し、心理的瑕疵の告知範囲について一定の基準を示しています。これは不動産仲介業者にとって必読の資料です。

トラブルが起こってしまった時の初期対応

買主から「話が違う」と連絡が入ったとき、初動で勝負の半分が決まります。ここでは、絶対に押さえておきたい3つのステップをご紹介します。

買主からの請求(通知)が期限内(知った時から1年以内)か確認する

民法第566条により、買主は契約不適合を「知った時から1年以内」に売主へ通知しなければ、原則として権利を行使できなくなります。ここで「通知」とは、不具合の内容をある程度特定して売主に伝えることを意味します。

つまり、買主が雨漏りに気づいてから1年を超えている場合、売主側はそれを主張して責任を回避するという強力な反論ができる可能性があります。受任通知や請求書が届いたら、まず日付をチェック——これは鉄則です。

❌ やってはいけない

✅ こうすれば進む

「まずは話を聞いてから」と期限確認を後回し

受信したその日に通知日と請求日を記録・保管

「1年過ぎてるから無視でOK」と自己判断

いつ知ったかの認定は争いになるため弁護士に確認

口頭でのやり取りのみで済ませる

メール・書面で記録を残し、時系列を整理

 

事実確認を優先する

感情的になっている買主に対して、売主や仲介業者がつい「そんなはずはない」と反論したくなる気持ちはよくわかります。でも、ここはぐっとこらえて、まずは事実を固めることに集中しましょう。

具体的に確認すべき事項は次のとおりです。

  • 不具合の発生時期・発見の経緯(いつ・どこで・どのように気づいたか)
  • 現状の写真・動画(日付入りが望ましい)
  • 業者の見積書・調査報告書(原因と費用が書かれているもの)
  • 契約書・重要事項説明書・告知書の記載内容
  • 契約前後のメール、SNSメッセージなど当事者間のやり取り
  • 引渡し時の立会い記録や物件状況確認書

 

【現場の教訓】事実確認をせずに「うちで補修します」と口約束してしまい、後から業者見積もりが想定の3倍だった——という失敗は珍しくありません。金額の提示や解決方針の表明は、必ず事実と証拠が揃ってから行ってください。

専門家(弁護士・宅建業者)へ相談する

事実関係と時系列がある程度整理できたら、専門家への相談をおすすめします。「この段階ではまだ弁護士は早いかな」と思われる方もいらっしゃいますが、むしろ逆です。訴訟になってから相談するより、書面が行き交う前に方針を決める方が、解決の選択肢も広がり、費用も抑えられます。

【相談すべき境界線】

  • 買主が弁護士・司法書士を代理人に立てた
  • 内容証明郵便が届いた(受け取った日から時効の起算点になることも)
  • 契約解除・手付金返還・損害賠償など、複数の請求が絡んでいる
  • 当事者間の話し合いが2週間以上平行線になっている
  • SNSや口コミサイトで会社名を出されそうな雰囲気がある

 

上記のどれか1つでも当てはまれば、それはもう「弁護士相談のタイミング」です。

売買契約における履行トラブルで弁護士に相談するメリット

「弁護士に頼むと高そう」「訴訟にまで発展させたくない」——よくいただくお声です。しかし、弁護士の役割は「訴訟で勝つこと」だけではありません。むしろ訴訟を回避し、円満解決に導くための伴走者として機能する場面の方が多いのです。代理人業務を依頼すれば高くなりますが、相談だけで済む場合も多く、相談料だけなら高くはなりません。

法的な観点からアドバイスをすることができる

契約不適合責任をめぐる問題は、民法・宅建業法・消費者契約法が複雑に絡みます。「この雨漏りは『契約不適合』に当たるのか」「追完請求(修補)・代金減額・損害賠償・契約解除のうち、どれが妥当か」といった判断は、条文の知識だけでなく、裁判例の蓄積を踏まえた経験が必要です。

弁護士が早い段階で関与することで、「相手の主張のどこに弱点があるか」「どこまでなら譲歩しても損失を最小化できるか」を冷静に見極められます。感情論に巻き込まれがちな場面で、客観的な法的基準を提示できる存在は非常に心強いものです。

契約書作成時の「特約」によるリスク回避

そもそも紛争を起こさないための予防法務こそ、弁護士を使う最大のメリットだと私は考えています。売買契約書には、契約不適合責任の期間制限・免責特約・現況有姿(げんきょうゆうし)売買などを適切に盛り込むことで、後日のトラブルリスクを大きく減らせます。

たとえば「引渡しから3ヶ月間に限り契約不適合責任を負う」、雨漏りなどの存在とその事前告知を前提に、「雨漏り・シロアリ・給排水設備の不具合について売主は責任を負わない」といった特約は有効に働きます(ただし、宅建業者が売主の新築住宅などには法令の制限があります)。

交渉をプロに任せることができる

弁護士が代理人として交渉に入ると、相手方も「本気度が伝わった」と受け止め、感情的な応酬が落ち着くケースが多くあります。また、業者様ご自身が矢面に立たずに済むため、本業への影響を最小限に抑えられるのも大きな利点です。

「お客様との関係を大事にしたい」「他のお客様への口コミリスクが怖い」——そういう思いを抱える不動産会社様こそ、弁護士を交渉窓口として活用いただきたいところです。

契約不適合責任を起こさないための対策方法

トラブルは起きてから対応するより、起こさない仕組みを作る方が何倍も効率的です。実務で効果が高い予防策を3つご紹介します。

「現状開示」と「告知書」の作成

売主にしか知り得ない情報を網羅した物件状況等報告書(告知書)を丁寧に作成することが、予防策の第一歩です。雨漏り・シロアリ・給排水設備の不具合歴、過去の修繕履歴、近隣トラブルの有無などをチェックリスト形式で記載してもらい、売主の署名押印を受けます。

告知書を作成することで、売主には「ここに書いたことがすべて」という覚悟が生まれ、買主にも「知らされていた情報」として後日の主張根拠になります。仲介業者としては、説明義務を果たした証拠としても機能する、まさに一石三鳥の書類です。

インスペクション(建物状況調査)や鑑定の活用

2018年の宅建業法改正により、既存住宅(中古住宅)の売買では、インスペクション(建物状況調査)の有無を重要事項説明書に記載することが義務化されました。インスペクションとは、国が定めた講習を修了した建築士等が、目視等により建物の劣化状況を調査するものです。

費用は5〜10万円程度が相場ですが、これで発覚した事項は告知書に追記することで、後日の紛争リスクが劇的に下がります。「わざわざ有料で欠陥を発見してどうする」と敬遠される売主様もいらっしゃいますが、長期的に見れば売主にとってもメリットの大きい仕組みです。

契約書での「責任の範囲」の制限

先ほど触れた特約の活用です。ポイントは「売主・買主の属性」と「物件の状態」に応じて、適切なバランスで設計すること。免責特約を入れすぎると、かえって消費者契約法や宅建業法違反で無効とされるリスクがあります。

予防策

実施タイミング

期待できる効果

告知書の作成

媒介契約締結後〜売買契約前

売主の責任自覚、仲介業者の免責

インスペクション実施

売出前〜契約前

隠れた欠陥の早期発見、価格の適正化

特約の設計

売買契約書作成時

責任範囲の明確化、紛争の長期化防止

 

お気軽に弁護士にご相談ください

不動産仲介業の現場では、1件のトラブルが会社全体の評判や業務に影響します。だからこそ、問題が大きくなる前の段階で、気軽に相談できる顧問弁護士の存在がものを言うのです。

「現在の顧問弁護士になんとなく不満がある」「空き地・空き家の開発を進めたいが法的リスクが気になる」「そもそも顧問弁護士を持っていないが、そろそろ必要性を感じている」——そんな不動産業者様からのご相談を、当事務所では数多くお受けしています。

【初回相談無料】

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メール:souseilaw33799@gmail.com

いつでもお気軽にお問い合わせください。

 

代表パートナー・所長 
高橋 英伸
京都大学法学部卒業後、旧司法試験合格を経て2006年に弁護士登録。大阪市内の企業法務系事務所で15年のキャリアを積み、2021年に蒼生法律事務所を開設。相続・共有・所有者不明土地など空き地・空き家問題に注力。宅地建物取引士・相続アドバイザーの資格も保有し、不動産に関わる法的問題を総合的にサポートしています。
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